前野蕘(マサル)東京芸大名誉教授 と 花水木

 前野マサルさんは、まちづくりに深くかかわってこられている。
中野はなみずきの会主催の2011.4.23公演では、「トーク」に出演されるとうかがった。それは、まちづくりの延長線上にあるからだろう。
 アメリカから日本に渡った花水木。その樹木は、日本人に愛されて街路樹、公園、庭木で、開花してきた。

私は卒論で以下のように前野さんを引用した。

《防火防災に強い町をねがい過ぎて、地元住人のコミニティを壊してしまっては元も子もなくしてしまう。なにごとも、兼ね合いが大事なのである。それには衆知を集めること。第三にかかげることは、住民参加の開放性のあるまちづくりを保障することである。
本『住みやすい町の条件』に、「江戸のある町・上野・谷根千研究会」の事務局長前野蕘(マサル)の下町発言が掲載されている。〔人や建物が密集した空間で暮らしている谷中の人たちは、コミュニケーションを大事にしながら、個々のプライバシシーを守る知恵を代々受け継いでいることに気づきましてね。たとえば、谷中には昔ながらのガラガラと開ける引き戸の家が多いんだけれど、戸が全部閉まっていたら、「今日は家に来てほしくない」、半分開いていたら「今日は訪ねてきてほしい」といったようなシグナルになっているとか、向かい合っている家同志で引き戸を空け放したとき、家の中が丸見えにならないように、玄関がずらして設計してあるという工夫が、谷中の町には溢れているというんです。(注5-1-8)〕【小林和夫編 永六輔ほか著『住みやすい町の条件』1991,64頁】
一瞥すると、下町はあけっぴろげで開放性のあるまちと見られているが、実は気遣いの心が下町の住まい方にはあった。下町の開放性のある住まい方は、隣近所、声がきこえることで、防犯に役立っているとの指摘もある。異常音はすぐ聞き分けられるからである。第四として、これら日本の住文化の知恵をいかすこと。これらを集合住宅に活かせぬ日本人ではなかろうが、と思うのである。なぜ、閉鎖的に拒否して、コンクリートの塊を増産してゆくのであろうか。》